村上春樹「ノルウェイの森」(上)(下)を読む。

驚くべきことに村上春樹を読んだことがなかったんです。食わず嫌いだったのです。なんとなく面白そうと思えなくてですね。
だけど、渋谷のTSUTAYAの文庫本のところのポップに「これさえ読んでおけば村上春樹を読んだと一応言えるのではないでしょうか」みたいなことが書いてあって、そうだなこれだけ世の中でハマる人が多い小説家の人なんだから一度くらい読んでみてもいいかなと思いました。あれは実にうまい宣伝文句だと思います。
というわけで読んだんですが、綺麗な淡々とした文章で描かれる現実感のない日常は、飽きることなくさらっと読めてしまいました。日常を薄いフィルターがかかった白い部屋の中から眺めているような感覚で最後まで読み終えました。何か恐ろしい喪失感を味わっている人というのはこれぐらい淡々と、現実感のない世界の中で、ただ自分と自分の見たい人や物や思考とだけ向き合って生きているものなんでしょうか。
確かにそんな気もします。私は過去に喪失感を味わった時は立ち直るのに半年ほどかかりましたが、その間は確かに、なんで世界がきちんと動いているのかよくわからないままに、とにかく自分は死ぬわけにはいかないので頑張って日常生活を過ごしているうちにちょっとずつ現実に戻ってきたような感覚がありました。今にして思い返せばの話ですが。
何があっても日常生活を過ごしていくことが大切なのだな、と思いましたよ。緑さんがワタナベ君をちゃんと自分がどこにいるのかわかるようにしてくれることを祈ります。
でも次は買わないと思います。